「エクセルじゃない」と言った数分後、画面を見て言い直した
移動の合間に休憩していたとき、複数の人で使っている一覧表の話になりました。担当者がメーリングリストへファイルを添付して送り、受け取った人がパソコンへ保存して開く。更新したものを再び送れば、受信箱にも保存先にも、似た名前のファイルが増えていきます。話を聞いていると、同じ一覧表のはずなのに、手元には二つのファイルがあるようでした。
誰かが記入した瞬間に全員の画面も更新される一つの表なのか。それとも、メールが届いた時点の内容を各自が別々に保存し、それぞれのコピーを更新しているのか。この二つは見た目が似ていても、使い方はまったく違います。しかし、その場ではそこがはっきりしませんでした。
私は話の途中で、共有されているのはクラウド上のスプレッドシートだと思い込みました。そして実物を開く前に、「エクセルじゃない、全然」と言い切りました。以前は誰かが入力すると全員の画面に反映されていた、という記憶があったからです。
ところが数分後、実際のファイルを開いた私は、「これはエクセルだ」と言い直しています。同じ会話の中で、同じファイルについて正反対のことを言ったわけです。
画面を見れば分かることを、私は記憶だけで先に決めていました。ここは格好よく書き換えられません。私の最初の判断が間違っていました。
二つのファイルのうち、最新版はどちらなのか
ただ、ファイルがエクセルだと分かっても、問題は解決しませんでした。画面には二つのファイルがありました。二つを開き、一方の内容をもう一方へ移して使っている状態でした。片方にだけ新しい記入があれば、それをもう片方へ移す必要があります。作業した直後の本人には違いが分かっても、あとから開く人には、ファイル名だけでどちらが新しいのか判断できません。
「元のファイルは、クラウドのどこにあるのですか」
そう聞いても、すぐには場所が出てきません。誰が最初に作ったのかは分かっても、いま全員が見るべき一つがどこにあるのかは別の話でした。添付されたファイルをダウンロードし、コピーを取り、名前を変え、また誰かに送る。そのたびに「元のファイル」「受け取ったファイル」「自分が更新したファイル」ができます。日付や連番の付け方が統一されていなければ、最後に保存した本人以外には経緯が見えません。
このとき、問題の見え方が変わりました。エクセルかスプレッドシートかというソフトの違いより、「正式な一つを誰が管理し、全員がどこから開くのか」が決まっていないことの方が大きかったのです。
解決手順は見えたのに、その場では進めなかった
私が考えた手順は単純でした。まず二つのファイルを左右に開き、記入内容を見比べて、どちらが最新かを確定する。必要な内容を一つへ集め、その一つをクラウドへ置く。そして、これからはファイルそのものをメールへ添付するのではなく、「このURLから開いてください」とリンクだけを共有する。全員が同じ入口から同じ表を開けば、少なくとも「どの添付ファイルを開けばよいのか」という迷いはなくなります。
しかし、そこで私は止まりました。そのファイルの所有者は私ではありません。私が新しい保存先を作ったとしても、作成者が従来のファイルを更新し続ければ、結局「正しい一つ」が二つになります。置き場所や編集権限を変えるなら、作成した人や実際に管理する人の了解が必要です。また、同じURLを共有すれば便利になる一方、誰でも編集できる設定にすれば、誰かが誤ってセルを消した変更も全員の画面へ反映されます。誰が編集でき、誰は閲覧だけにするのかも決めなければなりません。
手順を思いつくことと、その運用を決める権限があることは同じではありません。私は改善案を話しましたが、この日は誰が正式な管理者になるのか、どのファイルを最新版とするのかまでは決まりませんでした。
結論が出なかったからこそ、私の中には一つ残ったものがあります。共有の混乱を見つけたとき、いきなり便利な道具へ移すのではなく、最初に確認するのは「正しい最新版はどれか」「それを誰が管理するか」「全員がどこから開くか」の三つです。
そして何より、画面を見る前に断定しないことです。「エクセルじゃない」と言った数分後に、自分で「これはエクセルだ」と訂正した私は、その順番を身をもって確認しました。
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