「今日は契約しなくていい」と伝えたら、質問が始まった
打ち合わせが始まると、相手は最初に、今日は契約書へサインする日なのかと確認しました。
私は少し驚きました。前回の打ち合わせで条件は一通り説明しており、今回は、その後に出てきた疑問を聞く場だと思っていたからです。しかし、相手には「今日、その場で決めるのかもしれない」と伝わっていました。
そこで順番を戻し、「今日は契約しなくて大丈夫です。前回のあとで出てきた質問や、確認したいことを話す場です」と伝えました。
私の最初の読み違いは、前回説明したことは伝わっている、と考えたことです。こちらが話した量と、相手の中に残った内容を同じものとして数えていました。それを相手に確かめてもいませんでした。
打ち合わせの目的を言い直すと、質問が始まりました。手数料はどのように支払うのか。売上はどのような流れで受け取るのか。いずれも契約を判断する前に確認しておきたい内容でした。
答える時間より、質問が出るまでの時間が長かった
質問への回答自体には、ほとんど時間がかかりませんでした。前回の説明で出ていれば、その場で確認できた内容です。それが打ち合わせを一回はさんで、ようやく表に出てきました。
一方、責任の範囲について説明したときは、相手はすぐに理解を示しました。同じ人が、同じ場で、お金の流れには質問を重ね、別の条件には迷わず反応した。難しい話から順番に引っかかるわけではないのだと気づきました。
相手が「今日は決めさせられるかもしれない」と身構えている間は、質問が出にくかったのかもしれません。「今日は決めなくていい」とわかってから、確認したかったことが出てきたように見えました。
ただし、本当にそれが理由だったのかは本人に聞いていません。前回黙っていたのは理解できたからかもしれませんし、質問を整理できていなかっただけかもしれません。ここを「質問できる空気ではなかったから」と決めつければ、また私の側だけで話を完成させてしまいます。
毎回、最初に「今日は決めなくていい」と伝えるべきかについても、まだ答えは出ていません。決める日だとわかっているからこそ、資料をそろえて準備できる人もいます。安心して話せることと、決断へ向けて準備すること。その両方が必要です。
この日に残ったのは、「説明したか」だけでは確認にならない、という感覚でした。今日の目的が相手とそろっているか。相手が何を決めるつもりで座っているか。内容を説明する前に、まずそこを確かめる必要があります。