Norikの日々の記録

2026-09-02

トイレは三つぐらいですか、と聞いた。返ってきたのは一個だった

昼過ぎに電話が鳴った。広い戸建てを宿として貸し出したいので、管理を頼めるかという問い合わせだった。物件はもう手元にあり、今週には消防の検査を受ける。行政の窓口にも電話で相談済みだという。話は最初から具体的だった。

私は費用と数字の話から入った。管理を入れるとどこまでがこちら持ちになるのか。清掃にいくらかかるのか。手数料と清掃費を引いたあとに、売上の何割が残るのか。相手も同じ側にいて、一泊いくらに設定しようか迷っている、と言っていた。建物が広ければ清掃の単価も上がるので、それなりの金額を取らないと合わない。私はそういう話を、十分ほど続けた。

書類の上の人数と、泊められる人数

途中で設備のことを聞いた。何人まで泊める想定かと聞いたら、消防の側では十人を超える人数で通っているという。それだけ入るなら、と思って続けた。

「じゃあ、トイレは三つぐらいあるんですか」

一個しかない、という返事だった。屋外にもう一つあるが、そちらは和式だという。

ここで前提が崩れる。私の宿では十人を受けるつもりだったので、トイレは二つにした。一つのままで人数を増やすと、朝に必ず詰まる。詰まるだけなら我慢の話で終わるが、宿の場合はそこで終わらない。

「一個しかないと書いてあって、それでも泊まってくれるならまだしも、書いていなくて泊まってしまって、あそこは一個しかないよ、となったら口コミになる」

先に書いておけば予約は減る。書かなければ評価が下がる。どちらを選んでも、実際に入れられる人数は書類の数字より小さくなる。人数が小さくなれば、一泊で取れる金額も下がる。さっきまで二人で計算していた単価の話は、そこを直さない限り成り立たない。

誰も言っていなかった

気になったので聞いた。

「トイレ一個っていうのは、誰か何も言わなかったですか」

特に言われなかった、という答えだった。相談した先は一つではないはずで、検査も申請もここまで進んでいる。それでも、泊められる人数を実際に決めている数のことは、誰も口に出していなかった。

そして工事はもう終わっている。中に足そうとすれば、仕上がったところを壊すことになる。外に足すのは、また別の工事になる。金額はいつでも書き直せるが、こちらは書き直せないところまで来ていた。

先に相談してもらえていれば、そこは一番はじめに言う。実際に私はそう言った。ところが同じ電話で、私自身が最初に持ち出していたのは単価と手残りの話だった。設備の数を聞いたのは、そのあとだ。順番が逆だった。今回はたまたま途中で聞けたが、最後まで聞かずに単価の相談だけして終わる筋も、普通にあった。

数字は紙の上でいくらでも動く。動かないほうから先に数える。いま利回りや単価を計算している案件で、あとから変えられない条件はいくつあるだろうか。

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