2026-09-03
できますね、と答えた。そのあとで、残らないと思いますと言った
午後、移動の合間に電話が鳴った。使っていない一戸建てを持っていて、それを宿にできるか、運営はこちらへ任せる形でできるか、という相談だった。ご本人はその家から遠く離れたところに住んでいる。
私が最初に答えたのは「エリア的には大丈夫です」だった。うちが受けられる範囲かどうか、という意味である。相手が知りたいこととは、少しずれている。
そのうえで、その物件で宿ができるかどうかを確認済みか、用途地域はどうか、と聞いた。返ってきたのは「調整区域です」だった。市街化調整区域なら、基本的にはできないことになっている。私は「できない場合が多いですね」「行政に確認いただいたほうがいいですね」と答えた。
ただ、話しながら引っかかった。ネットの地図で見た、と言っていたからだ。そこには調整区域とよく似た顔で並ぶ「無指定」という区分がある。無指定ならできる。それを伝えると、「あ、ごめんなさい。じゃあ調整区域というのは間違いです。無指定ですね」と返ってきた。
ここで答えが「できますね」に変わった。
書類がない、図面がない
次に建物の話になった。建てたのは親で、当時の書類は何ひとつ残っていないという。古い家ではよくあることで、それ自体で終わりにはならない。ただ、収支の試算を出してほしいと言われたところは断った。
「図面がなければ、こちらもシミュレーションが出せないんですよ。いい加減なものを出したら、大変なことになるので」
手書きでもいいのか、と聞かれた。申請ではそのままでは通らないかもしれないが、寸法をきっちり取ればいい。そこは書き起こせる。ここまでの話は、一つずつ前へ進んでいた。
最後に立地を聞いた
「集客はできそうな立地ですか」
山あいだという。名の知れた山への道が近く、冬に人が来る施設もある。ただ、そこまで上がっていく道の途中で、周りには何もない。
私はここで、それまで積み上げた話をひっくり返すことを言った。集客が難しいと思う、と。加えて、部屋数のある家は清掃の手間と費用がそのまま重くなる。稼働が読めない立地でそれを払い続けると、手元にはほとんど残らない可能性がある。
ひとつだけ、答えが変わる場合も伝えた。売りたくても売れない家で、月に一度は行って窓を開け、風を通し、庭を見て、それでも維持費は出ていく。そういう状態なら、利益ではなく維持費をまかなうために動かすという選び方はある。目的がそこにあるなら、私の返事は変わる。
相手は「ちょっと考えてみます」と言って電話を切った。
切ったあとに残ったのは、順番のことだった。十分足らずのあいだ、私はできるか/できないかを調べ続けて、残るか/残らないかを最後に言っている。相手が最初に聞いたのは前者だが、決めるのに要るのは後者のほうだ。しかも後者は、立地を一つ聞けばおおよそ見当がつく。対応エリアか、用途地域はどうか、書類はあるか——先に並べたのは、こちら側が動けるかどうかの確認だった。
受けられる仕事だと分かったあとで、それでも残らないと言うのは、自分の売上を一件減らすことでもある。それでも言ったほうが後が楽だというのは、もう分かっている。まだ答えが出ていないのは、それをどこまで早い段階で言うか、のほうだ。早すぎると、相手はまだ何も話していない。
いま見積もりを出そうとしている案件で、相手の手元に残るかどうかを、何番目に確かめているだろうか。
関連:民泊で利益が残らない原因。稼働率・清掃・固定費で採算を見る方法
週1回、その週の実践記録のまとめと、オンラインサロン(2026年10月開講)の先行案内をLINEでお送りしています。
LINEで友だち追加する