ヒアリング / 確認 / 書類
同じ質問に3回違う答えが返るとき|確認のしかたを変える
同じことを3回聞いて、3回とも違う答えが返ってきたことがあります。相手が質問を無視していたわけではありません。相手は周囲の事例や人から聞いた話を合わせて答え、私は書類の一項目だけを求めていた。同じ会話の中で、二人が別の答えを探していました。4回目に言い方を強めるのではなく、確認の方法そのものを変える手順を整理しました。
この記事で分かること
- 同じ質問を繰り返しても答えが噛み合わない理由
- 4回目に言い方を強めず、確認方法そのものを変える手順
- 書類を「書いてある順」ではなく「あるはずのもの」で読む方法
- その場で答えたくなったときに、記憶で埋めない線引き
正直な前提
同じことを3回聞いて、3回とも違う答えが返ってきました
ある相談の電話で、私は書類上の区分を確認しようとしていました。
一度目に尋ねると、近くにも同じような施設があるという話が返ってきました。二度目に「調べてありますか」と聞くと、専門の会社に確認しているから大丈夫だという答えでした。そのまま話は、最寄りの交通機関や立地の便利さへ移っていきます。三度目は、その区分が何を指すのかを説明し直しました。それでも、すでに問題ないと聞いている、という話が返ってきました。
三回とも、相手は質問を無視していたわけではありません。相手にとってその問いは、周囲の事例、立地、人から聞いた話を合わせて答えるものでした。一方、私は書類に書かれた一つの項目だけを求めていました。同じ会話の中で、二人が別の答えを探していたのです。
結論:4回目は、言い方ではなく確認方法を変える
同じ質問に違う答えが返ってきたら、少し強く言い直しても進みません。やることは3つです。
- 二人で同じものを見る形にする。資料、画面、数値。言葉ではなく現物を指す
- 感覚の言葉を、確認できる情報へ置き換える。「近い」「広い」ではなく、測れるものに変える
- その場で答えを出すのをやめる。何が分かれば答えられるかを伝えて、資料を待つ
実際、四回目に私が変えたのは言葉ではなく形式でした。「その区分は何ですか」ではなく、「購入時の資料は手元にありますか。該当する欄を一緒に見られますか」。専門用語を知っているか尋ねるのをやめ、答えが書かれている場所を一緒に見る形にしました。
1:感覚の言葉を、確認できる情報へ変える
同じ電話で、周辺施設までの距離も確認しました。最初に返ってきたのは「歩いて数分くらい」という答えです。
しかし判断に必要なのは、近いか遠いかという感覚ではなく、地図で確認できる距離でした。歩く速さによって「数分」は変わります。道順と直線距離でも数字は変わります。その場で測っていないことが分かったので、口頭の印象だけで判断しないことにしました。
設備についても同じでした。利用できる人数を考えるために数を尋ねたところ、部屋は広いという説明が返ってきます。相談者は物件全体の魅力を伝えようとしていて、私は条件を確認しようとしている。どちらかが間違っているのではなく、見ている項目が違っていました。
相手を疑っているのではありません。感覚の言葉は、話す人によって幅が違うだけです。その幅を自分の側で勝手に狭めて解釈すると、あとで食い違います。
2:数字には、使われる条件が抜けている
数字が出てきても、それで揃ったわけではありません。
あるとき、荷物の重さについて話しました。同じ一キロでも、持ち方、歩く距離、体調によって感じ方は変わります。数字は一つでも、それを使う条件は一つではありません。
仕事でも、数字だけを見た側は「大した差ではない」と言い、実際に作業する側は「重い」と感じることがあります。どちらかが嘘なのではなく、前提が揃っていません。
機材の性能も同じでした。よい条件で測った数字を、そのまま厳しい環境へ当てはめれば足りなくなります。数字を疑うのではなく、誰が、どこで、どの状態で使う数字なのかを聞き返す必要がありました。
3:短い情報ほど、しつこく確認する
移動のある一日で、行き先の略号、時刻、ターミナル番号を何度も声に出して確認したことがあります。三文字ほどの短い情報を一文字ずつ区切り、相手が復唱し、こちらももう一度言い直す。
長い説明は一度で終えるのに、三文字は何度も繰り返す。一見すると非効率ですが、一文字を取り違えれば、その日の移動全体が崩れます。やり直しの大きさを考えれば、確認するほうがはるかに安い。
仕事でも同じです。金額の桁、期限、口座、型番、担当者名。短くて、間違えたときの代償が大きいものほど、復唱の対象にします。長い説明を丁寧に繰り返すより、ここに時間を使ったほうが効きます。
4:書類は「あるはずのもの」を探して読む
書類の読み方も変えました。
ある日、書いてある順番に読むのではなく、あるはずのものが書かれているかを見ました。付いているはずの部分が見当たらず、相手へ伝えると、その場で直す話になりました。
相手を疑っているわけではありません。書式が変われば載る項目も変わりますし、抜けは普通に起きます。抜けを前提に読めば見つけられます。時間はかかりますが、あとで気づいたときには、直す相手が目の前にいません。相手がいるうちに聞くのが一番早い。
数字と日付も二回確認しました。相手が読み上げたあと、こちらでもう一度言う。金額の桁、期限、その日に誰が何を持ってくるか。書類に書いてあることと、当日その通り動くことは別なので、声に出して段取りまで合わせました。
同じ日、相手が新しい道具をどう使っているかも聞きました。文章の見直しに少し使う人もいれば、名前だけ知っている人もいる。私は日常的に使う側なので、同じ前提で話せると思い込みやすい。しかし、同じ業界でも道具との距離はかなり違いました。
毎日使う人には具体的な使い方から話せます。まだ使っていない人に同じ話をしても届きません。どこから話すかは、こちらの想像ではなく、本人へ聞いて決めたほうが早い。用事を人へ渡すときも、方法を一つに固定せず、金額・置き場所・時間・目的だけを伝えて、やり方は相手が選べるようにしています。方法を固定すると、それが使えなかった瞬間に仕事がこちらへ戻ってきます。
確認とは、相手を試すことではありません。相手が自分と同じ前提だと決めつけないための行動です。目的と確認点を渡し、方法や答えは相手から返してもらう。そのほうが、途中で止まりにくくなります。
5:答えられないときに、記憶で埋めない
電話で細かな質問を受けたとき、手元に資料がなくても、その場で答えたくなります。待たせたくない気持ちもあります。
しかし記憶で答え、あとから違っていたときの手戻りは、「確認して折り返します」と言う手間より大きい。
ある日、途中から、確かめてから連絡すると伝えるようにしました。相手は嫌な反応をしませんでした。曖昧な答えを早く返されるより、正しい答えを待つほうが実務では早いからです。
別の相談でも同じ判断をしました。電話で一つずつ答えを出すのをやめ、手元の資料を送ってもらい、内容を確認してから見立てを返すと伝えました。その電話で即答していれば、書類も距離も確認しないまま、相手のその後の費用に影響する判断を伝えることになっていました。
できる、できないを急いで答えるより、「何を確認すれば答えられるか」を明確にする。これは仕事を遅らせることではありません。相手が動ける形にして返すことです。
6:話す前に、今日の目的をそろえる
最後に、確認のさらに手前の話です。
ある打ち合わせで、相手は最初に、今日は契約書へサインする日なのかと確認してきました。私は少し驚きました。前回の打ち合わせで条件は一通り説明しており、今回はその後に出てきた疑問を聞く場だと思っていたからです。しかし相手には、「今日、その場で決めるのかもしれない」と伝わっていました。
そこで順番を戻し、「今日は決めなくて大丈夫です。前回のあとで出てきた質問を話す場です」と伝えました。
すると、質問が始まりました。費用はどのように支払うのか。入金はどのような流れになるのか。いずれも判断の前に確認しておきたい内容です。回答自体には、ほとんど時間がかかりませんでした。前回の説明で出ていれば、その場で済んだ内容が、打ち合わせを一回はさんでようやく表に出てきました。
私の読み違いは、前回説明したことは伝わっている、と考えたことです。こちらが話した量と、相手の中に残った内容を、同じものとして数えていました。
ただし、「決めさせられると身構えていたから質問が出なかった」と決めつけるのも早いと思っています。理解できていたから黙っていたのかもしれませんし、質問を整理できていなかっただけかもしれません。ここを自分の側だけで完成させると、また同じことをします。
毎回「今日は決めなくていい」と言うべきかも、まだ答えが出ていません。決める日だと分かっているから、資料をそろえて準備できる人もいます。それでも一つ確かなのは、内容を説明する前に、今日の目的が相手とそろっているかを確かめるということです。
今日からやること
- 同じ質問が3回目になったら、言い方ではなく形式を変える。「◯◯は何ですか」ではなく「◯◯が書かれた資料を一緒に見られますか」。
- 感覚の言葉が返ってきたら、測れる形に置き換えて聞き直す。近い・広い・すぐ・だいたい。この4語が出たら要注意です。
- 数字を受け取ったら、条件を一つ聞く。誰が、どこで、どの状態で測った数字か。
- 金額・期限・型番は復唱する。短くて代償の大きいものだけでかまいません。
- 書類は「あるはずのもの」を先に探す。抜けは普通に起きます。相手がいるうちに聞きます。
- 手元に資料がない質問には、折り返すと言う。曖昧な即答より、正しい返事のほうが早い。
まとめ
話が噛み合わないとき、原因が相手の理解不足だと考えるのは簡単です。けれど三回同じ言葉を使って伝わらなかったなら、こちらが答えてほしい形式を示していなかったとも言えます。
資料、画面、数値。二人で同じものを見られる確認方法へ変える。そのほうが電話の時間も短くなり、思い込みで結論を出す危険も減ります。
いま進んでいない話のうち、相手と同じ書類を開いて確認したものは、いくつありますか。
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