条件提示 / 提案 / 断り方

悪い条件から先に出す|それでも断られない伝え方

条件の良くない案件を、半分は断られるものとして持っていきました。ところが、私が一番のネックだと思っていた条件は、相手から見れば手持ちで埋められるものでした。間違えていたのは、条件を出したことではなく、その前に自分で答えを決めていたことです。悪い条件を先に全部出し、無理かどうかは相手に決めてもらう。実際の電話の記録から整理しました。

条件を書き出して相手へ伝える順番を決めている作業デスク

この記事で分かること

  • 悪い条件を先に出しても断られない理由
  • 相手に見せる前に、自分で案件を落としてしまう癖
  • 「できます」と「手元に残ります」は別の質問だということ
  • 組む話で、最初に決めておく一点

正直な前提

持っていく前に、私が自分で落としていました

条件の良くない案件を、引き受けてもらえるかどうか相談する電話をかけたことがあります。持ち主が使いたい日があって、その日は貸せない。空いている日だけを回すことになる。人が常駐しないので対応は遠隔になる。短い時間で駆けつけられる体制も要る。清掃も任せたい。どれも、引き受ける側にとっては手間が増えるだけの条件でした。

だから私は、この案件を半分は断られるものとして持っていきました。

ところが、返ってきたのは断りではありませんでした。私が一番のネックだと思っていた条件は、先方から見れば、手持ちのもので埋められる可能性のあるものでした。話はそのまま、資料を送る段取りまで進みました。

結論:悪い条件は先に全部出す。無理かどうかは相手が決める

この二つは、片方だけでは成り立ちません。

  1. 条件を隠したまま判断を委ねるのは、押し付けになる
  2. 条件を出したうえで、こちらが結論まで出してしまうなら、連絡する意味がない

悪い条件を伏せたまま話を進めても、それは必ずあとで出てきます。そのときには、条件の悪さに加えて、黙っていたという事実まで乗ってきます。先に出しておけば、断られるだけで済みます。

1:良いところからではなく、悪いところから並べる

その電話で、私は良い条件からではなく、悪い条件から順に並べました。ひととおり話し終えてから、こう言っています。

「今の話で、絶対もう無理ということであればこれでおしまいなんですけど、可能性がありようでしたら、もう少しお話をしたいんですけど、いかがなもんでしょうか」

この一言には二つ入っています。ここで終わりにしてよい、という逃げ道。そして続ける気があるなら次がある、という入口。どちらを選んでも角が立たないので、相手は本音で答えられます。

先方は少し考えて、自分たちの側でその部分を引き受けられるかもしれない、という趣旨のことを言いました。こちらが最大の障害だと思っていたものが、相手の手持ちで解決できるものでした。

2:間違えていたのは、電話をかける前でした

電話を切ってから考えました。私は何を間違えたのか。

条件を先に出したことではありません。そこは正しかったと思います。間違えていたのは、その前です。持っていく前から、私はこの案件の答えを自分で出していました。これは無理だろう、と。

けれどもそれは、相手が何を持っているかを私が知らない、というだけの話でした。相手の側にどんな手があるのかを、こちらは全部は知りません。知らないのに、相手の答えを先に決めていました。

つなぐ仕事をしていると、これは何度も起きます。条件の悪い案件を、相手に見せる前に自分で落としてしまう。落とした案件は、当たり前ですが一件も成立しません。依頼主には「難しいようです」と返すことになりますが、それは正確ではありません。難しいと言ったのは相手ではなく、私です。

やり方 かかる手間 成立の可能性
条件が悪いので出さない ゼロ ゼロ
良い面だけ伝えて進める 大(後で必ず戻る) 低い。条件が出た時点で信用も落ちる
悪い条件を先に全部出す 電話一本 相手が決める。ゼロにはならない

断られると思ったまま、まだ出していない話が手元にないでしょうか。

3:「できます」と「残ります」は別の質問です

もう一つ、順番の話をします。今度は答える側での失敗です。

使っていない建物を活用できないか、という相談の電話を受けました。私が最初に答えたのは「エリア的には大丈夫です」でした。うちが受けられる範囲かどうか、という意味です。相手が知りたいこととは、少しずれています。

そのうえで、条件を一つずつ確認していきました。書類上の区分はどうか、必要な資料はあるか。途中で相手の認識違いも見つかり、それが解けて、答えは「できますね」に変わりました。ここまでの話は、一つずつ前へ進んでいます。

最後に立地を聞きました。周りに何もない場所でした。

私はここで、それまで積み上げた話をひっくり返すことを言いました。集客が難しいと思う、と。加えて、規模のある建物は維持の手間と費用がそのまま重くなる。稼働が読めない場所でそれを払い続けると、手元にはほとんど残らない可能性がある。

電話を切ったあとに残ったのは、順番のことでした。十分足らずのあいだ、私はできるか/できないかを調べ続けて、残るか/残らないかを最後に言っています。相手が最初に聞いたのは前者ですが、決めるのに要るのは後者のほうです。しかも後者は、立地を一つ聞けばおおよそ見当がつきました。

対応できる範囲か、条件は満たすか、書類はあるか。先に並べたのは、こちら側が動けるかどうかの確認でした。相手の判断材料ではありません。

4:受けられる仕事でも、残らないなら言う

受けられる仕事だと分かったあとで、それでも残らないと言うのは、自分の売上を一件減らすことでもあります。

それでも言ったほうが後が楽だというのは、もう分かっています。相手が後から自分で計算すれば、どのみち同じ結論にたどり着きます。そのとき「なぜあの人は黙っていたのか」が残ります。

ひとつだけ、答えが変わる場合も伝えました。利益ではなく、維持費をまかなうために動かすという選び方はある。目的がそこにあるなら、私の返事は変わります。

ここが大事なところで、「残りません」は断り文句ではありません。相手の目的を聞き直すための一言です。利益が目的なら向いていない。維持が目的なら成立する。どちらかを決めるのは相手です。

まだ答えが出ていないのは、それをどこまで早い段階で言うか、のほうです。早すぎると、相手はまだ何も話していません。いま見積もりを出そうとしている案件で、相手の手元に残るかどうかを、何番目に確かめているでしょうか。

5:断ることと、組むことは別に置ける

最後に、断る場面の話です。

知人に誘われて、ある説明会に出たことがあります。説明の前半は報酬の仕組みの話が続き、実際に何をどう売るのかの話はほとんど出てきませんでした。

途中で、売ったときに手元に残る率が示されました。一桁台でした。それを聞いた瞬間に、私の中では終わっていました。その率では広告費が出ません。一件の問い合わせを取るのに何をどれだけ払うことになるかを、自分の口座の動きとして知っているからです。

私はその場で言いました。事業として成り立っていないと思う、と。相手にとっては失礼だったと思います。それでも、その場で言わずに持ち帰ると、たぶん次が来ます。

翌朝、誘ってくれた本人から電話がありました。丁寧な電話でした。私は参加しませんと答え、そのうえで一つ確かめました。この人とは近く、別の事業を一緒に始めることになっていたからです。

そちらに集まった人へ、この話をすることはありますか、と聞きました。しないと言われたので、もうひとつ足しました。私はやらないし、人にも勧めない、と。自分が断るだけなら黙って断ればいい。けれど自分の名前で集まった人にこの話が回るなら、断るだけでは足りませんでした。

そして電話はそのまま、一緒にやるほうの事業の話に移りました。同じ人と、同じ電話で、片方を断って片方を進めた日でした。断ることと組むことは、別に置けます。

6:組むなら、経費の持ち方と分け方を最初に決める

その電話で、私は自分から切り出しました。

「後から揉めることは絶対にないと思いますけど、経費の持ち方と分け方だけは、ある程度、最初から決めておいたほうがいいと思って」

かかる費用はどちらが持つのか、そこを引いた残りをどう分けるのか。その場で決めてもらいました。

その少し前、別の相手との話で、自分の紹介として数えられるのかどうかが後から分からなくなったことがありました。決めていなかったのは私のほうです。同じことをもう一度やる気はありませんでした。

「後から揉めることは絶対にない」と前置きしてから切り出すのは、相手を疑っていないと伝えるためです。疑いではなく、数え方を揃える作業だと分かれば、この話は角が立ちません。

あと一つ。断るかどうかで悩んだ時間は、二日で一時間近くありました。答えは最初の数字ひとつで出ていたのだから、その一時間は本当は要りませんでした。誘われた時点で、何の話なのかを一行もらえばよかっただけです。それをしなかったのは、誘ってくれた相手を信用していたからで、いま思えばそれは信用の使い方を間違えています。

今日からやること

  1. 「条件が悪いから出していない話」を一つ選んで、今日出す。落とした案件は一件も成立しません。
  2. 悪い条件から順に並べて伝える。良い面から入ると、後半の条件が裏切りに見えます。
  3. 最後に逃げ道と入口を一緒に置く。「これで無理なら終わりで構いません。可能性があるならもう少し話したい」。
  4. 見積もりの前に、相手の手元に残るかを確かめる。「できるか」は自分側の確認、「残るか」が相手の判断材料です。
  5. 組む話は、経費の持ち方と分け方を最初に決める。揉める前提ではなく、数え方を揃える作業として切り出します。

まとめ

条件の悪い案件を持っていくのは気が重いものです。けれど、相手が何を持っているかは、こちらには分かりません。知らないのに答えを先に決めているだけのことが、よくあります。

悪い条件を全部出す。そのうえで、無理かどうかは相手に決めてもらう。断られたらそれで済みますし、まとまることもあります。自分で落とせば、可能性はゼロです。

もっとも、あの電話で話がまとまったわけではありません。資料を見てから断られるかもしれない。それでも、こちらで勝手に終わりにするよりは、ずいぶんましだと思っています。断られた理由が分かれば、次に似た案件を持っていくときの材料にもなります。自分で落とした案件からは、何も返ってきません。

断られると思ったまま、まだ出していない話が手元にありませんか。

この記事のもとになった実際の記録

断り方そのものは断った相談を宙に浮かせない、条件を先に置く話は値段以外で選ばれる理由を、言葉にする手順もどうぞ。

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