2026-09-05
悪い条件から順に並べた。それでも、相手は断らなかった
夕方、人と会う約束の合間に電話をかけた。持ち主から預かった話を、引き受けてもらえるかどうか、その候補になる先へ相談する電話だった。ふだん使っていない建物を宿として貸したい人と、それを引き受ける側をつなぐのが、今の私の仕事のひとつになっている。
条件は良くなかった。持ち主自身が使いたい日があり、その日は貸せない。空いている日だけを回すことになるので、引き受ける側から見れば優先順位が低い。人が常駐しないので、対応は遠隔になる。地域の決まりで、何かあったときには短い時間で駆けつけられる体制も要る。掃除も任せたいという話だった。どれも、引き受ける側にとっては手間が増えるだけの条件である。
だから私は、この案件を半分は断られるものとして持っていった。そして、良いところからではなく、悪いところから順に並べた。ひととおり話し終えてから、こう言った。
「今の話で、絶対もう無理ということであればこれでおしまいなんですけど、可能性がありようでしたら、もう少しお話をしたいんですけど、いかがなもんでしょうか」
返ってきたのは、断りではなかった。先方は少し考えて、自分たちの側でその部分を引き受けられるかもしれない、という趣旨のことを言った。私が一番のネックだと思っていた条件は、先方から見れば、手持ちのもので埋められる可能性のあるものだった。話はそのまま、資料を送る段取りまで進んだ。手元の図面が古いことを詫びて、メールで送ることになった。
決めるのは、こちらではなかった
電話を切ってから、少し考えた。私は何を間違えたのか。
条件を先に出したことではない。そこは正しかったと思う。悪い条件を伏せたまま話を進めても、それは必ずあとで出てくる。そのときには、条件の悪さに加えて、黙っていたという事実まで乗ってくる。先に出しておけば、断られるだけで済む。
間違えていたのは、その前だ。持っていく前から、私はこの案件の答えを自分で出していた。これは無理だろう、と。けれどもそれは、相手が何を持っているかを私が知らない、というだけの話だった。相手の側にどんな手があるのかを、こちらは全部は知らない。知らないのに、相手の答えを先に決めていた。
つなぐ仕事をしていると、これは何度も起きる。条件の悪い案件を、相手に見せる前に自分で落としてしまう。落とした案件は、当たり前だが一件も成立しない。持ち主には「難しいようです」と返すことになるけれど、それは正確ではない。難しいと言ったのは相手ではなく、私だ。
だから今は、こう考えている。悪い条件は先に、全部出す。そのうえで、無理かどうかは相手に決めてもらう。この二つは片方だけでは成り立たない。条件を隠したまま判断を委ねるのは押し付けだし、条件を出したうえでこちらが結論まで出してしまうなら、電話をかける意味がない。
もっとも、これで話がまとまったわけではない。資料を見てから断られるかもしれない。それでも、こちらで勝手に終わりにするよりは、ずいぶんましだと思っている。
断られると思ったまま、まだ出していない話が手元にないだろうか。
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