Norikの日々の記録

2026-09-08

同じ一万円の値下げが、安売りにも広告費にもなる

昼の一時から、運用を任せている宿泊施設の月次報告でした。画面共有が始まって、まず先月の数字です。売上は計画に対して百三十三パーセント。稼働日数は二十八日。今月の分もすでに予約でほぼ埋まっていて、空いているのは残り二日だけ。数字だけを並べれば、良い報告です。

この施設では、少し前から一泊の単価を下げて稼働を上げる、という方向で動いてもらっています。前の年の同じ月は、単価をかなり高く置いて、それで埋まったのが七日でした。今年は単価を半分近くまで落として、二十九日埋めています。売上は上がりました。ここまでは読み通りです。

ずれていたのは、その先でした。予約がどこから入っているかの内訳です。以前は自社のサイトからの予約が五割を超えていたのに、今はほぼ一件。今後三か月の予約に至っては、自社サイト経由はゼロ件でした。代わりに海外の予約サイトからの流入が大きく増えています。予約サイトを通ると手数料がかかりますから、売上は計画を超えているのに、私の手元に入る額はその分だけ削られていました。計画を達成した、という報告と、手残りが減った、という事実が、同じ月に並んでいたわけです。

そこで私が最初に口にしたのは、こうでした。自社サイトの予約システムには、毎月決まった維持費がかかっています。そこから予約が一件も入らないなら、あれは解約した方がいいのではないか、と。数字だけを見せられた直後の判断としては、そうなります。

値下げの引き換えに、何を受け取ったのか

ただ、聞いてみると事情がありました。予約サイトに寄せているのは意図してのことで、単価を下げているのも、まず口コミを集めるためだという説明でした。口コミが積み上がれば、そのあとで単価を戻せる。順番として、先に安く出している。

それを聞いて、報告の受け取り方が変わりました。そして、その場でこう言いました。安売りをしているように見えるけれど、その引き換えとして、これだけ口コミが増えました、という説明があれば、まったく違います。口コミを集めるための広告費として一万円安くしています、というのと、ただ単に一万円安くしています、というのは、経営者から見れば別のことです。金額は同じでも、意味が正反対になる。

実際に口コミがどれだけ増えたのかを聞くと、増えてはいるという答えでした。ただ、良い内容なのか、悪い内容が混ざっているのかは、その場では分かりませんでした。安く出した見返りが良い評価なら投資ですが、悪い評価をたくさん集めただけなら、単価を下げた分がまるごと損です。同じ施策でも、結果を確かめないと投資か損か決まりません。

今回の報告に足りなかったのは、数字ではなく、その手前の一段でした。数字だけを渡されると、受け取った側は自分の物差しで意味を埋めます。私は固定費を削る方向に埋めました。もし全体の狙いを先に聞いていれば、同じ数字を見て逆の判断をしていたはずです。

だから、次回からの報告に一つ足してもらうことにしました。今どの段階の施策を実行しているのか、その引き換えに何を得ているのか。口コミの件数と、その中身まで含めて出してもらう。それと、この方針を口頭ではなく資料に残してもらうことにしました。担当の人が変わっても、狙いが残るようにです。

これは相手に求めるだけの話ではありません。私が誰かへ数字を出すときも、同じことをしています。表示回数が増えました、記事が増えました、と数字だけを並べて、それが何と引き換えに得たものなのかを言わずに済ませていることがあります。受け取る人は、そこを自分で埋めてしまいます。

次からこう決めます。値下げの相談を受けたら、金額の大小ではなく、その値下げで何を買うのかを先に聞く。買うものが決まっていない値下げは、値下げではなく、ただ売上が減る話として扱います。そして自分が数字を出すときは、狙いを一行目に置いてから数字を並べます。

あなたが今下げている価格は、何を買うための値下げでしょうか。

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