強み / 言語化 / 選ばれる理由

値段以外で選ばれる理由を、言葉にする手順

自分の仕事を一文で説明しようとして、途中で止まったことがあります。文章にすれば整っているのに、声に出すと薄く聞こえる。原因は表現力ではなく、借りた言葉を使っていたことでした。借りた言葉を外し、三度話して削り、対象を一人に決め、できる範囲と条件を先に置く。実際の商談と自己紹介の記録から、4つの手順に整理しました。

自分の強みを書き出して整理している作業デスク

この記事で分かること

  • 自分の説明が「嘘っぽく」聞こえるときに起きていること
  • 借りた言葉を自分の言葉に入れ替える4つの手順
  • 対象を絞るのが怖いときに、先に決めておくこと
  • 「できます」と言う前に、条件を置いたほうが信用される理由

正直な前提

文章にすると整っているのに、声に出すと薄く聞こえました

ある朝、自分の仕事を一文で説明しようとしました。途中で止まり、言い直し、単語を替えてまた言いました。何度試しても、自分の口から出てきた感じがしませんでした。

文章にすれば整っています。内容も間違ってはいません。それなのに声に出すと薄く聞こえる。言い方の問題ではなく、自分の中身がまだ整理できていないのだと思いました。

「値段以外で選ばれる理由」が書けないとき、多くの人は表現力が足りないと考えます。私もそう思っていました。けれど実際に足りていなかったのは、言葉ではなく、自分で確かめた経験と、その経験を人に当てて削る回数でした。

結論:うまい言葉を探すのではなく、4つの工程を通す

先に手順だけ書きます。

  1. 借りた言葉を外す。どこかで読んで、うまくまとまっているから使っている単語を消す
  2. 同じ説明を三度、人に向かって話す。机の前で完成させない
  3. 対象を一つ選ぶ。「幅広く対応できます」を捨てる
  4. できる範囲と条件を先に置く。「できます」だけで終わらせない

この4つは、順番に意味があります。1と2で自分の言葉を作り、3で届く相手を決め、4で信用を落とさずに渡します。1を飛ばして3から始めると、借りた言葉で絞ることになり、絞った先でも同じように声が薄くなります。

手順1:借りた言葉を外す

私が使っていたのは、挑戦、調整、軸といった単語でした。どこかで読み、うまくまとまっているから借りた言葉です。

借りた言葉には利点があります。相手にも伝わりやすく、説明を早く始められる。書くときに手が止まりません。

ただし、その言葉には本来、使ってきた人の経験がついています。自分の経験の形が違うまま言葉だけを載せると、声に出したときに噛み合いません。朝に感じた嘘っぽさは、そのずれでした。

近道は見つかりませんでした。自分でやり、うまくいったことと失敗したことを自分の目で見るしかありません。痛い目を見て残った言葉は、表現が拙くても自分のものです。

外し方は単純です。書いた文章から、抽象的な単語に線を引きます。そして一つずつ「これを自分がやった場面はどこか」と聞きます。場面が出てこない単語は、借りた言葉です。消します。

借りた言葉 確かめる質問 残る言葉の例
丁寧に対応します 丁寧とは、何を何分以内にやることか 連絡は受けた日のうちに返します
お客様に寄り添います 寄り添って、実際に何をしたか 条件が合わないときは、そう言います
豊富な実績 何件で、どの種類か この種類なら◯件、別の種類は未経験です
ワンストップ どこからどこまで、誰がやるか ◯◯までは私、その先は紹介します

右の列は、格好よくありません。けれど声に出しても薄くなりません。自分がやったことだからです。

もう一つ、借りた言葉には副作用があります。借りた言葉で始めると、続ける理由まで借り物になります。私は「人に頼らない仕組み」という言葉にも引っかかったことがあります。仕組みを作っても、点検し手入れする人は必要です。自動化で作業が消えるのではなく、手入れの対象が作業から仕組みへ移るだけでした。自分の経験から説明できるものなら、面倒な手入れも続けられます。

手順2:同じ説明を三度、人に向かって話す

机の前で自己紹介を考えていると、きれいな経歴をつくろうとしてしまいます。私は実際にそうなりかけました。

初対面の相手に、自分の仕事を説明する場面が何度か続いた日があります。同じ経歴を話しているはずなのに、一回目、二回目、三回目で、話の重心が少しずつ変わっていきました。

  • 一回目:やってきたことを順番に並べた。文章を書く仕事から始まり、サイト全体の設計や集客へ広がり、独立して会社にした。事実は正確だが、聞く側には経歴の一覧として届いていた
  • 二回目:なぜ仕事がその順番で変わったのかを足した
  • 三回目:経歴よりも「結局、私は何をしたいのか」が先に出た。過去の仕事は、その考えに至った理由として後ろへ回った

人に話して反応を見ると、説明が長いところ、相手が聞き返すところ、自分が力を込めるところが分かります。繰り返すうちに、不要な部分が削れていきます。一人で書き直しても、この削り方はできません。

ただし、言い慣れることにも危うさがありました。後半の一回は、自分の説明を滞りなく進めることに気を取られ、相手が本当に知りたいことを拾い損ねた感覚が残りました。滑らかに話せることと、伝わることは同じではありません。

だから、三度話して言葉が固まったあとも、毎回相手の顔を見ます。うまく言えたかではなく、相手がどこで聞き返したかを見る。それが次の修正点になります。

手順3:対象を一つ選ぶ

自分の言葉が出てきたら、次は誰に向けるかです。ここで多くの人が止まります。私もまだ完全には越えられていません。

中身を良くすることには時間を使えるのに、届ける作業になると手が止まります。自分では価値を知っているので、説明を増やせばわかってもらえると思ってしまう。しかし相手は、そもそもこちらに強い関心を持っていません。

そこで気になったのが「幅広く対応できます」という言葉の弱さです。対応範囲が広いこと自体は悪くありません。けれど、選ぶ側が知りたいのは、自分の状況に一番近いのは誰かということです。何でもできますと言われても、自分のための相手だとは感じにくい。

絞るのは、今も怖いです。絞れば、そこから外れた人は来なくなります。来ていたかもしれない人を、自分から断っているように感じます。

それでも、絞らないままだと誰にも見つけてもらえません。選ばれるかどうか以前に、「自分の話だ」と気づいてもらえない。誰にでも合う言葉は、結局、誰にも強く届きません。

怖さを減らすやり方は一つだけ見つけました。捨てる範囲ではなく、残す一人を書くことです。「誰を断るか」で考えると損に見えますが、「この人が読んだら自分のことだと分かるか」で考えると、書く言葉が具体的になります。私の場合は、発信する場所を一つに決め、その中で日々の断片と、後から読める内容を分けて置くところから始めました。

手順4:「できます」の前に、条件を置く

ここが一番の分かれ目です。言葉が自分のものになり、対象も決まると、相手の反応が良くなります。そのとき、つい広く答えてしまいます。

提携先との定例で、相手から方針の説明がありました。小規模な案件を丸ごと引き受けると手間が合わないので、業務の範囲を区切った契約に変えていく、日々の手配はオーナー側でやってもらう方向にする、と。

私はそこで手を挙げました。うちには一部の作業だけ頼みたいという相手が多く、その作業を担う協力会社とも契約したところだったからです。そして、こう続けてしまいました。「今契約している会社さんは全国対応できるんですけど」。

相手の反応は速く、「めちゃくちゃ困ってるんで、そこを活かしてもらいたいですね」と返ってきました。立ち上げでいちばん詰まっているのが、まさにその手配だというのです。

期待された声を聞いた瞬間に、自分の言葉が広すぎたと分かりました。だから同じ通話の中で言い直しました。「全国対応と言っても、今すぐ動けるのは私ともう一人だけです。案件が入ったらそこから探すので、場所によっては金額が上がるかもしれません」。

相手が抱えていた問題の中身を聞いて、なおさらそう思いました。相場の金額を出しても人が見つからない地域がある、という話でした。つまり足りないのは「全国対応」という看板ではなく、その地域で明日動ける手のほうです。私が持っているのは看板の側で、手の側はまだ二人分しかありませんでした。

話が進んで、「うちで探さなくて大丈夫ということですね」と聞かれました。ここで「はい、全部こちらで」と言えば、案件はこちらに流れてきます。けれど私が答えたのは、「実際はご自身で探したほうが安いと思いますよ」でした。

自分の取り分が減る話を先にしたのは、格好をつけたからではありません。相手が後から自分で調べれば、どのみち同じ結論にたどり着きます。そのとき「なぜあの人は黙っていたのか」が残ります。一回の紹介と、その後もずっと相談してもらえる関係とでは、後者のほうが商売に合っています。

できる範囲と条件を先に置いても、相手が本当に困っていれば話は終わりません。むしろ、条件を置いたことのほうが記憶に残ります。これが、値段以外で選ばれるということだと思っています。

よくつまずくところ

  • 言葉を探し続けて、公開しない。三度話すには相手が要ります。完成してから人に見せるのではなく、途中のまま話します
  • 絞ったつもりで、業種を狭めただけ。「◯◯業の方へ」は対象ではなく分類です。その人が今どこで困っているかまで書いて、初めて絞れます
  • 短所を書けば誠実だと思う。書くのは短所ではなく条件です。「◯◯は苦手です」ではなく「◯◯までは対応し、その先は紹介します」
  • 一度決めて、更新しない。できる範囲は増えたり減ったりします。人が一人増えれば条件が変わるので、そのたびに書き直します

今日からやること

  1. いま使っている説明文から、抽象的な単語に線を引く。その単語ごとに「自分がやった場面」を書けるか確かめます。書けないものは消します。
  2. 同じ説明を、三人に向かって話す。相手が聞き返した場所をメモします。三回目に自分から先に出てきた話が、いちばん残したい中身です。
  3. 「この人が読んだら自分の話だと分かる」という一人を書く。業種ではなく、その人が今困っている場面まで書きます。
  4. 「できます」と書いてある箇所に、条件を一行足す。今すぐ動ける範囲、そうでない場合にどうなるか。この一行が、値段以外の判断材料になります。

まとめ

値段以外で選ばれる理由が書けないのは、表現力の問題ではありません。借りた言葉を使っていること、人に当てて削っていないこと、対象を決めていないこと、そして条件を置かずに「できます」と答えていること。この4つが重なると、どれだけ整った文章でも薄く聞こえます。

逆に言えば、自分でやって残った言葉を、届けたい一人に向けて、条件付きで渡す。それだけで、価格以外の判断材料が相手の手元に残ります。

あなたが最近誰かに答えた「できます」は、どこまでを指していたでしょうか。

この記事のもとになった実際の記録

値段の話そのものは値引きを求められたときの断り方、開業1年目の順番は開業1年目の問題解決ロードマップもどうぞ。

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