断り方 / 相談対応 / 紹介
断った相談を宙に浮かせない|終わらせ方と渡し先の作り方
受けられない相談に「できません」と答えた時点で、こちらの仕事は終わった気になります。けれど相手の困りごとは残ったままです。断る判断は早くていい。問題はその次に何を置くかでした。実際の電話の記録から整理します。
この記事で分かること
- 「できません」で終えた相談が、なぜ自分の手元にも残り続けるのか
- 断る前に一度だけ切り替える視点(自分が使うか/客が使うか)
- 受ける範囲を広く見せないほうが、結果的に相談が増える理由
- 断った相談を一行で残す形
- 止まっている案件を「次に誰が動くか」で分ける
正直な前提
断るのは速いのに、終わっていませんでした
朝、部屋を片づけながら何度も手が止まったことがあります。片づけ自体は数分でも、行き先が決まっていないものの前では、そのたびに判断が要る。仕事も同じでした。
受けないと決めた相談は、頭の中では処理済みです。ところが「では、どこへ頼めばいいのか」という問いだけが残ります。渡し先が無いものは、片づけと同じで手元に戻ってきます。自分で受けないと決めることと、その相談を放置することは別でした。
結論:断る速さは変えず、断る前に一度だけ視点を変える
やることは3つだけです。
- 自分が使うかどうかで裁く前に、「自分の客が使うか」を一度だけ見る
- 受けられない範囲は、最初に正直に言う(広く見せない)
- 「できません」の次に、どこへ行けばよいかを置く
断る判断そのものは一分で構いません。変えるのは、断ると決めたあとに一呼吸置くかどうかです。
断りの返事は一分。質問し始めるまでに五分かかった
昼前、知らない会社から電話がかかってきました。うちのホームページを見た、という入り方です。用件は、同じ枠の代理店をもう一社増やしてもらえないか、というものでした。
断るまでは早かったです。すでに契約している先があり、同じものを二社に持てば手元が煩雑になるだけだと伝えました。ついでに正直なところも言っています。そこで扱っても、こちらに残るものが小さい。今はもっと残るほうに力を割いている、と。断り文句としては、これで十分でした。
そこまでの私は、相手の話を一つの物差しだけで裁いていました。うちがやるか、やらないか。自分が使うか、使わないか。二択に落とし込めば、答えは一分で出ます。実際、一分で出ていました。
相手が粘ったので、五分後に気づきました
電話が終わりかけたところで、相手が別の商材の名前を出しました。同じ会社の中に、その分野の設備を投資として扱っている部署もある、という話です。
それは私が使うものではありません。ただ、うちへ相談に来る人が使うかもしれないものでした。
うちへ来る人は、だいたい二種類に分かれます。手元の建物をどうにかしたい人と、まだ何も持っていないが、これから何かに投資して稼ぎたい人です。後者には、こちらの本業に合う案件が出てくるまで渡せるものがありません。合う物件が出ない期間は、登録だけしてもらったまま連絡が途切れます。その状態を、ずっとそのままにしていました。
気づいてから、私は質問する側に回りました。どれくらいの規模が要るのか。初期にいくらかかって、何年で戻る想定なのか。資金の手当てはあるのか。対応できる地域はどこまでか。担当を代えて折り返します、という話になって電話は切れました。
断りの返事は一分で出ています。質問を始めるまでに、そこから五分かかりました。しかもその五分は、相手が粘ったから生まれた時間で、私が用意したものではありません。切ろうと思えば、いつでも切れていました。
断ると決めたら、切る前に一度だけこう考えます。
「これは自分が使わないだけで、自分の客が使う可能性はないか」
無ければそのまま切ります。あるなら、条件を聞いてから切ります。
条件を聞かずに「興味あります」で終えない
同じ日の午後、また電話が鳴りました。別の会社から、似た商材の案内です。午前の会社が折り返してきたのだと思い込んで、そう口に出したら、違いますと返ってきました。関係のない二社から、同じ種類の電話が同じ日に来ただけでした。
二本目では順番を変えました。商品の説明を最後まで聞く前に、紹介して決まったらいくらもらえるのかを先に聞きました。返ってきたのは、その取り決めはまだしていない、でした。
だから二本とも進んでいません。興味はあります。ただ、金額の決まっていない紹介は、こちらで計算ができません。何件つないだら何が残るのかを出せないものを、相談してくれている人のところへ持っていくことはできません。
受けられる範囲を、広く見せない
逆の立場、つまり自分が受ける側のときも同じです。
ある日、運営について新しい相談が入りました。持っている建物を自分では運営できないので、任せられる先を探している、という話です。比較的早い段階で聞かれたのが、どの地域まで対応できるか、でした。
全国どこでも同じ品質で対応できるとは言えません。移動距離も、現地で動く人も、何かあったときの速さも違います。範囲を広く見せれば、その場では期待されるかもしれませんが、あとで自分たちも相手も困ります。できない地域は、最初に正直に伝えたほうがいい。
ただし、断れば相手の困りごとが消えるわけではありません。部分的な工事の相談も、建物を貸せる形にしたいという相談も同じでした。今の自分たちでは受けられなくても、相談は確かに来ています。
そのたびに残るのが「では、どこへ頼めばいいのか」という問いです。受け皿を作っても、必要な人へ届かなければ回りません。ページが無ければ、何ができて何ができない会社なのかも、選ぶ側には分かりません。結局、集客と行き先の両方が要ります。
全部受けるのも、断らないのと同じでした
断る話の裏側に、受けすぎる問題があります。
提携先へ自分から電話をかけたことがあります。文句を言うつもりではなく、話が前に進む速さと、進んだ先で決まる割合が想定とかなり違っていたので、それをそのまま言うところから始めました。
それまでの私の受け方は単純でした。まだ何も持っていない人は弾く。すでに対象が手元にある人は、一応すべてつなぐ。全国へ広げるつもりでいたので、来た問い合わせを選り好みする理由がありませんでした。数さえ積み上げれば、そのうち何割かは決まる。決まらなかった分は次の母数になる。そう思っていたのです。
電話の途中で、自分の見立てを口に出しました。百件集めて、十件も決まっていないと思う、と。言いながら、これは見立てではなく結果だと気づきました。
集客の件数は、そのまま広告費に比例します。決まった一件のために払っているのではなく、決まらなかった九件にも同じだけ払っている。母数だと思って積んでいたものは、母数ではなく支出でした。しかも、決まりにくい相手ほど、決まったあとに手がかかります。取り分は小さいのに、やり取りの回数だけが増える。
電話の終わりに頼んだのは、値引きでも件数でもありませんでした。条件です。キーワードでもペルソナでもいいので、絞れる情報をもらえないか、と。増やせば増えるという理由で増やしていたものが、増やすほど減るものになっていました。
断った相談を、一行で残す
断ったあとに残すものがなければ、同じ判断を毎回ゼロからやり直すことになります。
実際、私は条件を聞かずに断った案件で、同じ失敗を二度しかけました。ある物件について、種類を聞いた時点で断っていたのです。後日また同じ物件の話が来て、今度は最後まで聞くと、用途に制限がないこと、規模が十分にあること、改装前提の話であることが分かりました。前に断ったとき、私はこのどれも聞いていませんでした。
断った相談は、その日のうちに一行だけ残します。
「日付/相手が何を求めていたか/受けられなかった理由/どこへ案内したか/条件が変わったら受けるか」
受けた案件を記録する人は多いのですが、断った案件を記録する人は少ないです。実際には断った数のほうが多いはずなので、そこを空白にしていると、経験の大半を捨てていることになります。
宙に浮くのは、相談だけではありません
断った相談が手元に残る感覚は、日々の小さな用件でも同じです。
ある日の夜に振り返ると、かなり動いたはずなのに、終わったものはほとんどありませんでした。車の預け入れは返答待ち、書類は形式の確認待ち、物件は次に会うところまで。達成感が薄いのも当然です。
以前なら、何も終わらなかった一日として片づけていたと思います。けれど止まっている場所を一つずつ見ると、全部が放置されていたわけではありませんでした。こちらが返す番なのか、相手の返事を待つ番なのか。それが分かっていれば、待つ時間にも意味があります。
問題は、終わっていないことではありません。どこで止まり、次に誰が動くのか分からなくなることでした。
断った相談も同じです。「できません」と言った時点で、こちらの番は終わっています。ただ、相手の番も終わっていないなら、その一件はまだ動いています。渡し先を置くというのは、次に誰が動くのかをはっきりさせるということでした。
最後の行を空白のままにしないことが、この記事で言いたいことのすべてです。
今日からやること
- 断ると決めたら、切る前に一度だけ「自分の客が使うか」を見る。無ければそのまま切ります。
- 紹介できそうなら、取り分を先に聞く。金額が決まっていないものは、人のところへ持っていけません。
- 受けられない範囲は最初に言う。広く見せると、あとで双方が困ります。
- 「できません」の次に行き先を置く。次に尋ねられる相手や場所まで用意して、初めて一件が終わります。
- 断った相談を一行で残す。条件が変わったときに拾い直せます。
まとめ
断る判断は速くて構いません。私も一分で断っています。問題は、そこで会話を終えると、相手の困りごとも、自分の頭の中の用件も、両方が宙に浮いたままになることでした。
切る前に一度だけ「自分の客が使うか」を見る。渡せるなら条件を聞く。渡せないなら行き先を置く。そして断った内容を一行残す。これだけで、断った一件が次につながります。
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