相談対応 / ヒアリング / 電話
相談に答える前に聞く3つ|今・引っかかり・期限
ホームページの番号を見てかかってくる電話は、話し始めの時点で本人も質問を言葉にできていないことがあります。私は以前、分かる範囲から先に答えていました。すると相手は「分かりました」と言って切るのに、本当に聞きたかったことは残ったままになります。答える前に聞く順番を、実際の相談の記録から整理しました。
この記事で分かること
- 漠然とした相談に輪郭を出す3つの質問
- 「対応できます」をそのまま受け取ってはいけない理由
- 説明した直後の「わかりました」を信用しない理由
- 相談の入口を、整理できていない人でも入れる形にする
- 受けた相談と断った相談を、一行で残す形
正直な前提
早く答えることが、親切だと思っていました
顔が見えない電話では、沈黙があると早く答えを出したくなります。相手が困っているのだから、分かるところから答えたほうがいい。そう思っていました。
けれど、相手の問いがまだ形になっていない段階で結論へ飛ぶと、違う問題へ答えることになります。その場は流れますが、相手の用件は解決していません。話す技術ではなく、曖昧なまま少し待てるかどうかの問題でした。
結論:答える前に、3つだけ聞く
相談を受けたら、答える前にこの3つを順に聞きます。
- 今どうなっているか(現状)
- 何が引っかかっているか(障害)
- いつまでにどうしたいか(期限)
3つが分かると、相手が必要としている情報の範囲が見えます。逆に、ここを飛ばして答えると、丁寧に説明したつもりで、相手の求めていない答えを渡すことになります。
目的を聞く前に、条件の話に入ってしまった
実際に外した例を書きます。
木曜の朝、宿泊事業の相談の電話を受けました。まだ物件は買っていない段階で、遠方の一室を買って宿にしたいという話です。近隣への説明が要ること、管理組合が無いことを先に伝えたところまでは、今でも同じことを言います。
問題はその次でした。私はそのまま、その土地で客が集まるかどうかの話に入りました。競合が増えていること、年中人が来る理由がある場所とそうでない場所の差、雪の多い土地は厳しいこと。相手が大都市圏に住んでいると聞いて、お住まいの地域で探されたほうがいい、とまで言っています。
五分ほど話したところで、相手が目的を説明してくれました。今年その土地の祭りに行って気に入った。拠点を一つ持って自分で楽しみたい。行けない間は貸しておければいい。そういう話でした。
投資として回るかを聞かれていたのだと、私はそこまで思い込んでいました。私の答えは全部、儲かるかどうかを軸に組み立ててあったわけです。目的が分かってからは、答えが変わりました。自分で使う拠点にして、空いている期間の費用を少しでも戻すのが目的なら、集客が弱い土地でも成立します。同じ物件、同じ土地、同じ雪です。変わったのは、何のために持つのかという前提だけでした。
条件を聞く前に、この一行を挟みます。
「今回のご相談は、儲けを出すためですか。それともご自身で使うためですか」
言い方はそれぞれの仕事に合わせて変えて構いません。大事なのは、条件を聞く前に置くことです。
相手が答えを持っていない相談もある
ある日は、知らない相手からの電話が何本かありました。ホームページで番号を見つけ、とりあえずかけたという相談は、話し始めの時点で本人も質問を言葉にできていないことがあります。
この日は答える前に、今どうなっているか、何が引っかかっているか、いつまでにどうしたいかを順に聞きました。三つが分かると、漠然としていた相談に輪郭が出ました。
条件変更の連絡でも、途中で一度止めて、こちらが理解している前提を言葉にして返しました。合っていれば進み、違えばその場で直せます。数十秒かかっても、後から話を戻すより早い。
切ったあとで、もう少し聞けたかもしれないと思った電話も一本ありました。それでも、この日に残ったのは話す技術ではなく、曖昧なまま少し待つことでした。
受ける電話と、かける電話
相手と目的を確かめるのは、受けるときだけの話ではありません。
代表者を名指しする電話がかかってきたことがあります。相手は会社名を名乗ったものの、用件はすぐには出てきません。私は返事をする前に、誰からの電話で、何のための連絡なのかを聞きました。以前にも連絡している、という説明が先に返ってきましたが、それだけでは今の用件は分かりません。そこで改めて、何についての電話なのかを確認しています。
この二つを聞けば、売り込みなのか必要な連絡なのかを短い時間で判断できます。最初から決めつけて切れば、大事な連絡を落とす可能性があります。反対に、相手と目的を確認せずにつなげば、こちらの時間を守れません。
電話を切ったあと、自分がかける側のときはどうかと考えました。名前だけ名乗り、相手が察してくれるのを待っていないか。受ける側に回ると、最初の十秒で用件を伝える大切さがよく分かります。
「対応できます」の範囲を確かめる
同じ日の午後、宿泊運営を代行できる先を探して、こちらから電話をしました。対象の概要、探している役割、営業面まで見てもらえるかを伝えると、幅広く対応できるという返事がありました。
ただ、「対応できます」だけでは判断できません。どの地域までか、自社で行うのか、提携先へ渡すのか。それによって実際の運営は変わります。答えを聞いて終わらず、その言葉が指す範囲を確かめました。
誰なのか、何のためか、どこまでなのか。この三つを先に揃えるほうが、後から話を戻す時間を減らせます。
説明した直後の「わかりました」は、まだ信用しない
聞く側の話をもう一つ。
まだ会ったことのない相手と電話で話したとき、丁寧に説明してもらっているのに、私が知りたいこととは少しずつずれていきました。途中で全体の説明を聞くのをやめ、こちらが心配していることを先に伝えて、「困ったとき、実際には誰が電話に出るのですか」と聞きました。そこで初めて話がかみ合いました。
逆の立場でも同じです。人に何かを伝えるとき、存在を知ってもらうこと、何をしている人か理解してもらうこと、信じてもらうことは、それぞれ別の段階です。私はときどき、この階段を一度に上がってもらおうとして、説明を詰め込みすぎます。
伝えた直後なら、相手は内容を覚えています。その場で「わかりました」と言われると、伝わった気になる。しかしそれは理解したというより、言葉がまだ消えていないだけかもしれません。何日か置いても残っている一つか二つが、その人に本当に届いたものです。
誤解されたくないので、補足したくなります。別の例も足したくなる。けれど説明を足し続けたら、何が残ったのか確かめられません。一度伝えたら手を離して、数日後に相手が何を覚えているかを見る。こちらが強調した箇所ではなく、何気なく話した例が残っているかもしれません。それなら次に直すべきなのは相手ではなく、こちらの伝え方です。
そもそも、整理できていない人が来られる入口か
相談の受け方を考えていて、入口そのものを疑ったことがあります。
研究会のつくり方を考えていたときのことです。これまでは、ある程度考えがまとまった人が、自分の内容を持ってくる場を想定していました。ただ、それでは一番困っている人が来にくい。まとまらないから止まっているのに、まとめてから来ることを入口にしていたからです。
そこで前半の時間を、整理されていない話をそのまま出せる時間に変えることにしました。「何が問題かわからない」「どこから話せばよいかわからない」という状態でも来られるようにする。最初の一回はぎこちなくなると思います。話があちこちへ動き、結論が出ない人もいる。それでも、完成した人だけが話せる場より、止まっている人が動き出せる場にしたい。
問い合わせフォームも同じです。項目を増やして整理してもらおうとするほど、いちばん困っている人が入れなくなります。整ってから出してもらうのではなく、整う前の材料を出せる入口にする。整理は、受けたこちらが3つの質問でやればいい話です。
聞いた内容を、その場で残す
3つ聞けても、残していなければ次に活きません。これは相談を受ける側の話であると同時に、断った相談をどう扱うかの話でもあります。
私は条件を聞かずに断った案件で、同じ失敗を二度しかけました。ある物件について、建物の種類を聞いた時点で断っていたのです。時間にして数十秒。後日また同じ物件の話が来て、今度は最後まで聞くと、用途地域の指定がなく使い道を変えられること、駐車場が数十台分あること、改装前提の話であることが分かりました。前に断ったとき、私はこのどれも聞いていませんでした。
条件を聞かずに断ると、手元には何も残りません。比べるものがないので、次に似た話が来てもまた同じところで止まります。逆に、3つ聞いたうえで断った相談は記録になります。現状・引っかかり・期限が分かっていれば、合わなかった理由がそのまま残る。理由が残っていれば、条件が変わったときに拾い直せます。
相談を受けたら、その日のうちに一行だけ残します。
「日付/相手の現状/引っかかっていた点/期限/こちらの返事」
受けた相談も、断った相談も同じ形で残します。断った数のほうが多いはずなので、そこを空白にしていると経験の大半を捨てることになります。
今日からやること
- 答える前に3つ聞く。今どうなっているか、何が引っかかっているか、いつまでにどうしたいか。
- 条件を聞く前に、目的を一行で確かめる。「今回のご相談は、◯◯のためですか。それとも△△のためですか」
- 途中で一度止めて、理解を言葉にして返す。合っていれば進み、違えばその場で直せます。
- 「対応できます」は範囲を聞く。どこまでか、自社か、外へ渡すのか。
- 説明したら、数日後に何が残ったかを見る。足すのではなく、残ったものを確かめます。
- 受けた相談も断った相談も、一行で残す。日付・現状・引っかかり・期限・返事の5項目です。
まとめ
相談に早く答えることと、相手の役に立つことは別でした。分かる範囲から答えると、相手は「分かりました」と言って切りますが、聞きたかったことは残っています。
答える前に、今・引っかかり・期限の3つを聞く。条件より先に目的を聞く。「対応できます」は範囲を確かめる。どれも数十秒で済みますが、後から話を戻す時間より、はるかに短くて済みます。
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