外注 / 選び方 / 頼み方
初めての外注、選び方と頼み方|金額と納期の前に確かめること
初めて誰かに仕事を頼むとき、並べて比べられるのは金額と納期くらいです。ホームページの一本目でも、名刺の一箱でも、選ぶ材料はだいたいそこに集まります。けれど、実際に差がついたのは納品されたあとでした。私が外注で外したところと、変えてから結果が変わったところを、実際の依頼の記録から整理します。
この記事で分かること
- 金額と納期だけで比べると、なぜ差がつかないのか
- 見積もりを取るときに一つだけ足して聞く質問
- 頼む範囲を削っても、着手日は早くならない理由
- 詰まったとき、新しい先を探す前にやること
正直な前提
渡せないのは、値段が理由ではありませんでした
私はこの一年、どうすれば一人でもっと回せるかを考えていました。朝を早くする、移動中に電話をかける、同じ作業を短くする。増やそうとしていたのは自分の時間です。けれど一日は二十四時間しかなく、動ける時間はもっと短い。上限のあるものを増やそうとしていたわけです。
うまく任せられた仕事を振り返ると、どれも先に手順を言葉にできていたものでした。逆に言えば、自分がどうやっているのか説明できない仕事は、渡しようがありません。外注が進まない原因は、相手が見つからないことより、渡す形になっていないことのほうが多いです。
結論:選ぶときと頼むときで、見る場所が違う
外注でつまずく場面は、大きく3つに分かれます。それぞれ、見るべき場所が違います。
- 選ぶとき:渡すまでの正確さだけでなく、渡したあとの関心を見る
- 頼むとき:範囲と金額より先に、着手日を聞く
- 詰まったとき:新しい先を探す前に、前にやってくれた人へ一本電話する
どれも、特別な交渉術ではありません。聞く順番を変えるだけです。
選ぶとき:渡したあとの話ができるかを見る
昼前に電話が鳴りました。離れた県の土地を買うときに、間に入って動いてくれた方からです。用件は手続きの報告でした。上に建っていた古い建物を壊した分の登記が終わったので、役所から証明の書類が自宅に届く。それを法務局へ出せば、この件は全部終わります、と。
私はその場で、それって自分で行ってもそんなに大変ではないですかね、と聞いています。書類を一枚出すだけの話に見えたからです。買うところまでで十分に動いてもらっていたので、残りは自分でやるのが筋だろうと思いました。
続けて出てきたのは、最悪、現地まで行かなくてよくなったら、という言葉でした。意味が分からず聞き返すと、来月から一か月、現地に部屋を借りたのだそうです。理由を聞くと、その土地を本格的に売りに行きたいから、という話でした。問い合わせが少ないのは自分でも分かっている。寝かせているうちに草が伸びるので、秋のうちに抜いて除草剤も撒いておきたい。現地にいれば人脈もできる。草は十一月ごろまで伸びるから、それまでに形にしたい、と。
私の中では、終わっていた取引でした
買うところまでが、その方に頼んだ仕事です。契約も引き渡しも済んで、あとは自分の持ち物をどうするかという話になります。だからこの電話も、残っている事務の連絡だと思って受けました。実際、私が気にしていたのは、書類をどちらが出しに行くかという一点だけです。
相手はそこで区切っていませんでした。自分が勧めて買ってもらった立場だから、売れるところまでが自分の担当だと考えている。だから頼まれてもいない時期に、頼まれてもいない場所へ、自分の費用で移る。
ここで私が変えたのは、人に仕事を任せるときの見方でした。それまで私は、速さと段取りの正確さで相手を見ていました。返事が早い、抜けがない、期日を守る。その見方で外したことはありません。ただ、そこで測れるのは渡すまでの品質です。渡したあとに何が残るかは、別のところで決まっていました。
見積もりに一つだけ足して聞く質問
金額と納期は、どこに聞いても答えが返ってきます。用意されている答えだからです。だから差がつきません。
見積もりを取るとき、一つだけ足して聞いてみてください。
「前に受けた似たお仕事は、その後どうなりましたか」
値段でも納期でもない質問なので、答えは用意されていません。渡したあとを見ている人は、ここで具体的な話ができます。見ていない人は、作ったところまでしか話せません。それだけで、比べる材料が一つ増えます。
金額の差は一度きりですが、この差は続きます。ホームページの一本目でも、名刺の一箱でも、チラシの一枚でも同じです。作ったものがその後どう使われているかを気にしている人と、納めた時点で手を離す人とでは、半年後に手元に残るものが変わります。
頼むとき:範囲を削っても、着手日は早くならない
持っている土地の草が道路にはみ出しているので刈ってください、という通知が届きました。二度目です。いつも草刈りをお願いしている先へ電話をかける前に、決めていたことがあります。全面を刈ってもらうのはやめよう、ということです。敷地は広く、全部やれば手間も費用もそれなりになります。指摘されているのは道路にはみ出している部分だけなので、そこだけでいい。
自分としては、これで話は早くなるはずでした。頼む量を三分の一にも四分の一にも減らしたのだから、そのぶん軽く、そのぶん早く動いてもらえる。そう思っていました。
返ってきたのは、範囲の話ではありませんでした。今は長雨で作業が止まっていること。そのせいで待ってもらっている案件が溜まっていること。今日はたまたま晴れたので、動ける人は全員そちらに出ていること。来週もずっと雨模様であること。だからいつ着手できるかは、今この場では約束できない、という話でした。
動かせる変数と、動いていない変数
電話を切ってから気づきました。私がこの依頼で調整していたのは「どこまでやるか」でした。相手の側で詰まっていたのは「いつ手が空くか」でした。範囲を半分にしても、前に並んでいる列は一件も短くなりません。私が動かせる変数と、着手日を決めている変数が、まったく別のものだったということです。
もう一つ、順番の問題もあります。通知は二度目でした。指摘を受けてから動くというのは、天気が崩れたあとの、いちばん混んでいる時期の列の最後尾に並ぶ、ということでもあります。範囲を削って手に入れた軽さは、そこでは効きません。
相手が悪いという話ではありません。雨で作業が止まるのは当然で、順番に受けているのも当然です。確かめていなかったのは私のほうで、確かめるべきだったのは、範囲ではなく時期でした。
期限のある依頼は、範囲や費用の相談より先に「今、どれぐらい待ちますか」を聞きます。待ちが長いと分かったなら、そこでやることは範囲を削ることではなく、先に並ぶことです。
見積もりを取るとき、金額と範囲は必ず聞くと思います。着手できる日は、いつ聞いているでしょうか。
詰まったとき:新しい先を探す前に、前の人へ電話する
先ほどの草刈りには続きがあります。週末に現地を見てくれたそうで、返ってきた話は三つでした。一メートルでは足りない。上から枝が垂れてきているので、道に出てくるものを取り切るには二メートルから三メートルは刈らないといけない。フェンスにつるがだいぶ絡んでいて、今はつるがいちばん勢いのある時期なので手間がかかる。料金も、以前より上がっている。
先に聞くと決めていたのに、待ち時間を聞いたのは話の最後でした。答えは、一か月ぐらいは待ってもらうことになる、というものです。
そこで、去年同じ場所を刈ってくれた方に電話をかけました。頼み方はここまでと同じで、全部じゃなくても道に出ている分だけでも刈ってもらえたら、です。
返ってきたのは、やり方の提案でした
範囲の話でも時期の話でもありませんでした。つるが絡んでいるところは、刈るより除草剤をかけて枯らせばいい、という提案です。去年あの場所を刈った人なので、フェンスの話もすぐに通じました。坂のところは土が落ちるから刈るしかない、平らなところは除草剤、枯れたつるは無理に取らなくていい。電話を切るまでに、そこまで決まりました。金額も、まだ見に来ていない段階の目安をその場で出してくれました。
四日間を振り返ると、私が動かそうとしていたのは、先週は範囲、次は時期でした。結果を大きく変えたのはそのどちらでもなく、現場を知っている人に聞いたことです。知っている人は、頼まれた範囲をそのまま見積もるのではなく、やり方を組み替えてきます。
開業して一年目だと、困ったときほど新しく頼める先を探しがちです。検索して、比べて、一から事情を説明する。けれど、去年チラシを作ってくれた人や、ホームページを直してくれた人は、もうこちらの事情を知っています。
次に同じ仕事が来たら、新しい先を探す前に、前の人へこう聞いてみてください。
「去年お願いしたのと同じ件なんですが、今年はどうやるのがいいと思いますか。何日ごろなら入れますか」
範囲と金額の相談は、その答えを聞いてからでも間に合います。
外注先を見るときの4つの観点
相談の場で誰が何をするかまで決まる相手かどうかについては、相談のあとに、誰が何をするか決まる相手を選ぶでも書いています。
頼む前に、渡す形にしておく
選び方と頼み方の前に、渡せる形になっているかという問題があります。私がうまく任せられた仕事は、どれも先に手順を言葉にできていたものでした。
だから、新しい仕事を引き受けたら、まず自分でやる仕事か渡せる仕事かを分けて、渡せる側は最初から渡す前提で手順を書いておく、と決めました。渡す先が増えても、何を渡すかを決めるのは自分です。
そして渡すときは、完成した状態、期限、担当、報告の方法を先に決めます。「早めに」ではなく日付で、「よろしく」ではなく誰がやるかで伝えます。距離が離れているほど、この4つを曖昧にした分がそのまま手戻りになります。相手の環境が違う場合の進め方は、約40か国の海外現場で学んだ、異文化の相手と仕事を進める7つの原則にまとめました。
今日からやること
- いま抱えている仕事を、自分でやる側と渡せる側に分ける。渡せる側は、手順を箇条書きで3行だけ書いておきます。書けないものは、まだ渡せません。
- 見積もりを取るとき、質問を一つ足す。「前に受けた似たお仕事は、その後どうなりましたか」。金額と納期の比較では出ない差が出ます。
- 期限のある依頼は、着手日から聞く。「今、どれぐらい待ちますか」。待ちが長いなら、範囲を削るのではなく先に並びます。
- 詰まったら、前にやってくれた人へ一本電話する。新しい先を探して一から説明するより、事情を知っている人のほうが早く、やり方ごと変わることがあります。
まとめ
初めての外注で比べられるのは金額と納期くらいです。ただ、そこはどこに聞いても答えが返るので差がつきません。差がつくのは、渡したあとに関心があるか、今どれくらい混んでいるか、やり方を組み替えられるか、の3つでした。
そして、渡す前に自分の側でやることがあります。手順を言葉にしておくことです。説明できない仕事は、相手が誰であっても渡りません。
いま抱えている仕事のうち、あなた自身でなければできないものは、本当は何個あるでしょうか。
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